変形性股関節症の治療
変形性股関節症は、脚の骨(大腿骨)と骨盤との間にある軟骨が磨り減り、炎症、そして痛みを発症させる病気です。骨と骨の接合部のずれが、軟骨の状態を悪化させていきます。原因は様々ですが、骨盤の臼蓋が大腿骨の接続部分をきちんと覆っていない状態(臼蓋形成不全)が加齢と共に進行して発症するケースが、日本では多く見られます。また、女性に多い病気であることも特徴の一つです。
関節の痛みを「仕方のないもの」としてあきらめている方もいらっしゃいます。しかし、関節の痛みをそのままにしておくと、その辛さから不自然な身体の使い方をしてしまい、病気を患っている箇所だけでなく、他の部分にも支障を及ぼします。
関節の痛みは原因がはっきりと分かる病気で治療の内容は大きく分けて保存治療と手術治療に分けられます。
まず、医師に相談してください。
人工股関節置換術とは?
関節の軟骨がすり減ってくると痛みが強くなり、関節自体の動きが悪くなったり、歩きにくくなってきます。
このように障害のおこった関節を金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工の関節で入れ替えることで、痛みがなくなり、歩行能力が改善されます。
このような手術を人工関節置換術といい、股関節、膝関節を中心に日本国内で一年間に20万例以上の手術が実施されているといわれています。
人工股関節置換術では、関節を神経のない人工物に置き換えるため痛みが取れ、関節の動きがよくなって歩きやすくなります。
QOL(日常生活の質)を高める治療効果の高い手術です。人工股関節はポリエチレンのライナーと金属またはセラミックの骨頭という組み合わせを使うことが多く、このセラミックの骨頭を使ったことで、人工股関節の耐用年数が向上しています。
人工股関節置換術の種類としては、全人工股関節置換術、人工骨頭置換術があります。
全人工股関節置換術は、変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより変形した関節を、人工股関節に入れ替える手術です。
人工骨頭置換術は、大腿骨頚部内側骨折や大腿骨頭が何らかの原因で壊死を起こした場合に、大腿骨頭を切除し、金属あるいはセラミックでできた骨頭で置換する手術です。
全人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)
変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより変形した関節を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工股関節に入れ替えることで痛みがなくなり、短縮した下肢を1-2cm程度長くすることが可能で、歩行能力が改善されます。患者さんの年齢や骨の形状、質によって、骨セメントを用いる場合とセメントを使用せずに直接骨に固定する場合とがあります。
手術時間は通常2~3時間程度です。手術は感染を予防するため、クリーンルームを使用して行います。
手術の2~3週間前より患者さん自身の血液を貯血し、手術の際にその血液を輸血します。(自己血輸血)
例としては、術後2~3日程度で車椅子移動を、4~5日程度で歩行練習を始め、約1ヵ月で退院できます。入院中に、日常生活動作、特に、入浴、階段昇降、畳での生活、トイレ動作について訓練します。
THAは股関節の悪い患者さんに多くの恩恵をもたらしますが、長い年月が経過すると緩みが生じ、入替え(再置換)の手術が必要な場合があります。一般的に、20年が経過すると約60%の患者さんで緩みが生じ、その中で約半数の患者さんが再置換手術を受けているとの報告があります。しかし、再置換手術を受けることになっても、1~2ヵ月の入院で、ほぼ元通りに復帰することが可能です。しかし、緩みの程度によってはかなり長期間に亘って日常生活動作の制限を受けることもあります。
手術の合併症として、感染、脱臼、血栓症などのリスクもありますので、手術に際しては、専門の医師によく相談されることをおすすめします。
退院後は、最初の1年は3ヵ月毎、退院後2〜3年間は半年毎、その後は年1回受診、経過観察を受けます。THAをされた患者さんは、片方なら身体障害者4級、両方を置換されたならば3級に認定(※)されることもあります。
退院後は、手術前にできたことは手術後もほぼできると考えて差し支えありません。自転車や車の運転は退院後数ヵ月でできるようになりますし、水泳やサイクリング、またゴルフやハイキング程度の山歩きもできるようになり、筋力低下や骨粗鬆症の予防にもなります。
1日5~6,000歩程度が目安ですが、旅行時に長く歩いても問題ありません。
注意点としては、長い階段昇降や床からの立ち上がり動作を頻回に行うと、人工股関節に負担がきますので気をつける必要があります。
※平成26年4月1日以降の申請から、人工股関節手術を受けた際の身体障害者認定基準は、「術後の経過の安定した時点での関節可動域等に応じて、4級、5級、7級、非該当のいずれかに認定」と変更されました。
人工骨頭置換術(Bipolar Hip Arthroplasty:BHA)
人工骨頭とは股関節は骨盤側の寛骨臼(かんこつきゅう)に、球形の大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり込む、いわばボール&ソケットの形状をしています。 この大腿骨頭に何らかの障害が発生したときに、金属やセラミック、プラスチックなどでできた人工骨頭が、大腿骨頭の代わりになることができます。 骨が大きくずれていたり骨折が複雑な大腿骨頸部骨折に人工骨頭置換術を行うことにより、早期に体重をかけて歩けるようになります。
人工骨頭置換術(BHA)は、大腿骨頚部内側骨折や大腿骨頭が何らかの原因で壊死を起こした場合に、大腿骨頭を切除し、金属あるいはセラミックでできた骨頭で置換する手術です。
全人工股関節置換術(THA)と違い、臼蓋側は置換せず、患者さん自身の軟骨と摺動(擦り合い)させます。患者さんの年齢や骨の形状、質によって、骨セメントを用いる場合と、セメントを使用せずに直接骨に固定する場合があります。
人工骨頭置換術の手術時間は多くの場合1~2時間程度です。
例としては、術後2~3日程度で車椅子移動を、4~5日程度で歩行練習を始め、約3週間~1ヵ月で退院できます。
入院中に、日常生活動作、特に、入浴、階段昇降、畳での生活、トイレ動作について訓練します。
BHAもTHA同様に、股関節の悪い患者さんに多くの恩恵をもたらしますが、長い年月が経過すると緩みが生じ、入替え(再置換)の手術が必要となる場合があります。再置換手術を受けることになっても1~1.5ヵ月ほどの入院で、ほぼ元通りに復帰することが可能です。
手術の合併症として、感染、脱臼、血栓症などのリスクもありますので、手術に際しては、専門の医師によく相談されることをおすすめ致します。
退院後は、定期的に受診し、経過観察を受ける必要があります。